C'est la vie

セラヴィ。「それも、人生」という意味のフランス語。教員を退職し、もう一度英語を学び直したり、価値観を広げたいと思って活動中。

【映画】『幕が上がる』青春とは何だ?!

オススメ度★★★★☆

<テーマ>部活、青春、演劇


ももいろクローバーZの青春映画!『幕が上がる』予告編

 

紹介 

2015年2月28日に公開。原作は劇作家・演出家の平田オリザ2012年の小説「幕が上がる」。

踊る大捜査線シリーズ」「サマータイムマシンブルース」などの本広克行(かつゆき)が監督を務め、「世代年代を問わず幅広い方々に共感し感動してもらえる青春映画」を目標に制作されました。

脚本は今一番若者の言葉をリアルに書けると言われている「喜安浩平」が担当。

代表作は僕も大好きな「桐島、部活やめるってよ」。

キャストはももいろクローバーZ百田夏菜子玉井詩織佐々木彩夏有安杏果高城れにの5人に加え、黒木華ムロツヨシらが務めました。

弱小演劇部の日々を描き、「あきらめない心」や「不安感」の正体に迫るストーリー展開。

事前に主演の5人に対して、平田オリザの約25時間の演劇ワークショップが実施され、クランクアップまで4か月に渡るスケジュールが組まれるなど、手間と時間をかけて製作されたのが特徴。

 

平田オリザさんについて

公開された年に、平田オリザさんの演劇「冒険王」を見に行きました。平田さんの演出の特徴である同時多発会話を見られて良かったです。

平田のいう「同時多発会話」とは、ある一つの場所で複数の会話が同時進行する現象を指している。例えばそれには、何人もの人間が同時に発話し、しばしば「聴取不能」とされてしまうような、パーティー会場で起こっている会話などが挙げられる。

ここで平田が目指していることは、既に台本のなかで完成されている会話を舞台上で再現することではなく、一人ひとりの登場人物の行為が複雑に絡む、会話の生成過程そのものを舞台上でリアルに構築することである。

平田オリザの演出(修士論文の概容)

普段演劇に馴染みのない私ですが、(文化祭で指導する程度)冒険王は興味深い内容でした。

あらすじは、海外の安宿で、そこに宿泊する多種多様な日本人と出会うというものです。

海外生活をする者は、皆、大きな夢を描いて海外に飛び出すんですのですが、現実に直面し、その夢を忘れてしまうのです。

そして、安宿で怠惰な生活を送っている。

つまり、みんな最初は冒険王なのです。

そんな皮肉を感じました。

 

また、平田さんの高校生対象の演劇ワークショップも見学させていただいたこともあります。

まず声を出すことから始められていました。

そして、どうすれば声を出す環境を自然に作れるのか、考えさせていたのが印象的でした。

 

映画について

地区予選敗退。最後の大会を終えた先輩たちに代わり、部長として富士ヶ丘高校の演劇部をまとめることになった高橋さおり(百田夏菜子)。

「負けたらヤなの!」と部員の前で意気込むさおりだが、悩める日々が続く。

どうやったら演技が上手くなれるの?演目は何にすればよいの?「わからないー!」そんな時、学校に新任の吉岡先生(黒木華)がやってきた。

元学生演劇の女王だったらしい!美人だけどちょっと変わったその先生は、地区大会すら勝ったことのない弱小演劇部の私たちに言った。

「私は行きたいです。君たちと、全国に。行こうよ、全国!」気迫に充ちたその一言で、彼女たちの人生は決まる。

演目は「銀河鉄道の夜」、演出は部長のさおり。

演じるのは、看板女優でお姫様キャラの“ユッコ”(玉井詩織)黙っていれば可愛い“がるる”(高城れに)一年後輩でしっかり者の“明美ちゃん”(佐々木彩夏)そして演劇強豪校からのスーパー転校生“中西さん”(有安杏果)らの部員たち。

吉岡先生と、頼りない顧問の溝口(ムロツヨシ)と共に、富士ヶ丘高校演劇部は、見たことも行ったこともない、無限の可能性に挑もうとしていた。

映画『幕が上がる』公式サイト

 

 

ザ青春映画ですね。

ストーリーでね、大衆受けすると思うんですよ。

ある程度の満足度を得られるみたいな。

ただ、結構セリフがズーンっと胸に突き刺さるものが多くて、たとえばさおり部長の言葉で

「一生懸命やるだけじゃダメだ。一生懸命やって、一生懸命やっている自分たちに酔いしれてるだけじゃダメだ。」

これとか部活とか勉強とかやっててありがちじゃないですか?

 

他にも吉岡先生のセリフで

「本当に、本気を出すってこと。もちろん、いままでも本気で頑張ってきたんだろうけど、もう一つ上の、もう芝居しか考えられないって感じになるってこと。で、それは、たぶん、いままでみたいに、楽しいだけじゃ済まないかもしれないってこと。」

最後の楽しいだけじゃ済まされないってところ。

これって何かを成し遂げるときには避けては通れない道だと思うんですよ。

夢を追いかけるにしても、大学受験するにしても…。

 

原作との違い

実は、私は原作の方がテーマが深かったと思っていて、「銀河鉄道の夜」という題材と自分たちの現実とのつながりが、映画では伝わってこなかったんです。

なぜ銀河鉄道の夜を演劇したのかというところをしっかり伝えないと、この映画のメッセージに欠落ができてしまう。

原作では伝わってきたんたんですよ。

要は日常の「不安」を表現したかったてことじゃないかなと思うんです。

原作にはこんな言葉があります。

「私たちの頭の中は、銀河と同じ大きさだ。でも、私たちは、それでもやっぱり、宇宙の端にはたどり着けない。私たちは、どこまでも、どこまでも行けるけど、宇宙の端にはたどり着けない。どこまでも行けるから、だから私たちは不安なんだ。その不安だけが現実だ。」

つまり、私たちの頭のなかすなわち舞台ならどこまでも行ける。

だけど、宇宙の端にたどり着けないように、完成がない。

だから不安を抱き続ける。

それが自分たちの部活を通して過ごした「現実」なんだ。

彼女たちにとって、銀河=舞台なんですよ。

だから、銀河鉄道の夜はどんな「恋愛」などを扱った演劇よりも、リアルだと思えた。

すごく納得いくんです。

それが映画で伝わってこなかった。非常に残念です。

 

ただ、この部分があまりにも私にとって納得いかなかったから原作も読み直しましたし、いろいろ関連書籍を読むきっかけになりました。

そういう意味で、幕が上がるをより深く楽しむきっかけをもらった映画です。

なんだかんだ言ったって映画っていいなぁと思えた映画です。

中高生に是非、見せてあげたい映画だと思います。